デジタルポスターセッション外104(消化器外科学会)
11月1日(土) 15:18–15:42 第16会場(神戸国際展示場1号館2F デジタルポスター会場)
外P-513

化学(放射線)療法 により病理学的完全奏功が得られた膵癌10例の検討 優秀演題賞

土屋 一志1
共同演者:杉本 元一1, 工藤 雅史1, 小林 信1, 小西 大1, 後藤田 直人1
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国立がん研究センター東病院・肝胆膵外科
【緒言】近年, 膵癌に対する化学療法・放射線療法の発展に伴い, 切除可能境界症例に対するR0切除率の改善や,切除不能症例に対するconversion surgeryの報告が増えている. しかし, 術前治療で病理学的完全奏功(pathological complete response : pCR)が得られることは稀であり, 自験例について文献的考察を加え報告する.【方法】2016年2月から2024年10月までに当院で通常型膵癌に対し術前治療後に膵切除を施行した367例において, pCRが得られた10例の臨床病理学的所見と予後について検討した. 【結果】対象症例において男性7例, 平均年齢64歳, 局在は頭部8例, 体部1例, 尾部1例, 診断時切除可能性は切除可能2例, 切除可能境界型1例, 切除不能7例(局所進行2例, 遠隔転移5例)であった. 術前治療はゲムシタビン+ナブパクリタキセル(GnP)5例, modified FOLFIRINOX(mFFX)4例, ゲムシタビン+S-1 2例, 放射線治療併施2例であり(重複含), 治療期間中央値は7.5ヵ月であった. 化学療法後, 画像効果判定は部分奏功7例, 安定2例, 完全奏功1例で, 5例でCA19-9の正常化を認めた. 術式は膵頭十二指腸切除術8例, 膵体尾部切除術2例であった. 摘出標本の病理組織学的検討では,全例で原発巣と考えられた領域に線維化のみを認めた. 術後補助療法は9例で施行, 内訳はS-1 4例, GnP 4例, mFFX 2例(重複含)で, 治療期間中央値は5ヵ月であった. 術後追跡期間中央値(四分位範囲)45(20-65)ヵ月において, 5年生存率59%, 再発4例, うち2例が原病死, 6例が無再発生存中である. 【考察・結語】既報では膵癌に対する術前治療後にpCRが得られる割合は0-11%, 5年生存率は45-70%と報告されている. pCRの予測因子としてmFFX施行, 放射線療法, 術前CA19-9正常化が報告されている. pCRが得られた症例は長期予後が期待されるが, 33-61%に再発が報告されており,術後補助療法の実施と再発の可能性に留意した厳重な経過観察が重要と考えられた.
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