ワークショップ5(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会)
10月27日 14:00–17:00 第12会場(マリンメッセ福岡 大会議室)
内W5-8

咽喉頭表在癌におけるELPS+ESD融合治療の工夫と課題

山口 隼1
共同演者:福澤 誠克1, 糸井 隆夫1
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東京医大・消化器内科
【背景】ELPSは内視鏡医と頭頸部外科医の連携による咽喉頭表在癌に対する低侵襲かつ臓器温存療法として普及している.ELPSの課題として,術野での器具の干渉,頸部食道進展症例の存在が挙げられるが,ELPSでの切除困難部位においてESDの併用効果は不明瞭である.【目的】咽喉頭表在癌に対するELPS+ESD併用治療の有用性を検討する.【方法】当院にて2014年8月から2021年6月までに経口的切除を施行した咽喉頭表在癌を対象とした.全126例中,ELPS単独治療群57例,ELPS+ESD併用治療群69例に2群に分別し,治療成績をPropensity Score Matching(PSM)を用いて比較検討した.【結果】症例の内訳は男/女:86/7,平均年齢:67.7±9.0歳,病変部位:下咽頭/中咽頭/喉頭:96/23/7,平均腫瘍径:21.1±11.1mm,肉眼型:0-I/0-IIa/0-IIb/0-IIc;23/48/43/12,T分類:pTis/pT1/pT2/pT3;40/53/31/2,深達度:EP/SEP;40/86であった.ELPS単独群とELPS+ESD併用群は共に一括切除率は100%であり,ELPS+ESD併用群はELPS単独群と比較し切除速度(19.5±9.7mm2/min vs 13.1±6.4 mm2/min,p<0.001)が有意に早く,R0切除率(62.3% vs 43.9%,p = 0.027)が有意に高かった.PSMにより背景因子をmatchingさせた94例の比較検討でも同様の結果を示した(切除速度:20.3±10.3mm2/min vs 13.2±6.5 mm2/min, p<0.001,R0切除率:68.1% vs 44.7%,p = 0.022).喉頭浮腫,皮下気腫,後出血,嚥下障害,狭窄を含んだ偶発症の発生率は2群間で有意差は認められなかった.ELPS+ESD併用群にて頸部食道進展症例を含む2例が狭窄を生じたが,いずれも内視鏡によるバルーン拡張術にて対応可能であった.【考察】従来のELPSでは治療困難な部位に対してもELPSとESDとの融合によって,更に迅速な内視鏡治療が可能であった.一方,食道入口部や咽頭腔に広く進展している症例は狭窄リスクもあり,咽喉頭癌治療において内視鏡医と頭頸部外科医との連携をより一層重視するべきである.
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