【背景】局所進行膵癌(LAPC)に対しては化学療法(CT)及び化学放射線療法(CRT)が適応となるが両者の使い分けや照射の至適時期については確立した見解はない.【方法】2007年1月~2020年12月に当院で診断,治療導入した膵癌208例のうち,膵癌取扱い規約第7版増補版に基づくLAPC37例についてCRT群とCT群に分けて後方視的に全生存期間(OS),無増悪生存期間(PFS),無遠隔転移生存期間(DMFS),有害事象を比較した.更にCRT群における事前のCTの有無でも分けて検討した.【結果】CRT群13例,CT群12例.照射の内訳は50Gy/25fr.5例,50.4Gy/28fr.4例,60Gy/30fr.3例,IMRT42Gy/15fr.1例.CRT群:CT群として年齢中央値68歳:78.5歳,男/女=9/3:4/8,Ph/Pbd=9/3:10/2.PS0/≧1=8/5:3/9,血清CA19-9中央値300:1231.1例でCT後BR-Aと判定され追加CRT後に手術を施行された.両群間でOS,PFS,DMFS中央値に有意差はなかった(460日 vs 384.5日,p=0.21;218日 vs 294日,p=0.31;276日 vs 306.5日,p=0.66).Grade3以上の有害事象について血液毒性がCRT群で有意に多く(p<0.01),非血液毒性としてCRT群の1例でGrade3の下痢を生じた.CRTの時期に関してCT後にCRTを施行したCT先行例が8例,初回からCRTを施行したCRT先行例が5例.OS,PFS,DMFS中央値はいずれもCT先行例で有意に長かった(603日 vs 303日,p<0.01;312日 vs 129.5,p<0.05;428日 vs 166日,p<0.05).CRT群の生存期間に関して年齢(≧70),部位(Ph),初診時の血清CA19-9≧500,CTの先行,S-1と放射線療法の併用,FOLFIRINOX又はGEM+nabPTX投与歴それぞれにlogrank検定を行ったところ,導入CTの有無のみが有意差をもって生存期間と関連していた(HR0.16,95%CI 0.036-0.68,p<0.05).【結語】LAPCに対するCT先行後のCRTは有用な可能性があるが少数例での検討であり症例の蓄積が望まれる.