デジタルポスターセッション肝042(肝臓学会)
10月28日 14:00–14:24 第15会場(マリンメッセ福岡 アリーナ デジタルポスター会場)
肝P-162
2型糖尿病合併NAFLD患者における経口セマグルチドの肝病態に与えるインパクト
新井 泰央1
共同演者:厚川 正則1, 糸川 典夫1, 岩切 勝彦1
- 1
- 日本医大付属病院・消化器・肝臓内科
【目的】NAFLD/NASH診療ガイドライン2020において,2型糖尿病合併NAFLD患者に対してGLP-1受容体作動薬の投与が提案された.本研究は実臨床における経口セマグルチドの2型糖尿病合併NAFLD患者における有効性と安全性を検証することを目的とした.【方法】肝生検もしくは超音波検査で脂肪肝を認め,問診・各種血液検査で他の慢性肝疾患を除外することでNAFLDと診断された患者のうち2型糖尿病を合併し,経口セマグルチドが投与された30症例を対象とした.セマグルチドは3mg/日を開始量とし,4週毎に治療効果と有害事象を評価して増量,維持量を決定した.本研究は倫理委員会承認のもと行われた.【成績】セマグルチド投与3か月時点で,体重減少を伴って(中央値:-3.2kg,p<0.001),血糖コントロール(血糖値:123mg/dLから102mg/dL,p<0.001.HbA1c:6.8%から6.3%,p<0.001),肝機能(ALT:59U/Lから43U/L,p<0.01.γ-GTP:67U/Lから45U/L,p<0.001)の有意な改善を認めた.投与6か月時点において(n=16),血糖コントロール,肝機能の改善は維持され,さらに中性脂肪(175mg/dLから128mg/dL,p<0.05),HOMA-IR(6.6から4.3,p<0.01),フェリチン(135.2ng/mlから103.0ng/ml,p<0.01),CAP値(344dB/mから279dB/m,p<0.01)の有意な低下も認めた.体重とCAP値の変化に強い相関関係を認めた(r=0.72,p<0.01).肝線維化の推移に関して,LSMに有意な変化を認めなかったが,FIB-4 index(1.42から1.10,p<0.01),4型コラーゲン7s(4.1ng/mlから3.5ng/ml,p<0.05)においては投与6か月時点においてベースラインからの有意な低下を認めた.投与初期に悪心・胃部不快感の有害事象を多く認めたが,経過観察や薬剤の減量で対応可能であった.【結論】本研究は2型糖尿病合併NAFLD患者に対する経口セマグルチドの投与が体重減少を伴って,血糖コントロールのみならず肝の脂肪化,炎症の改善をもたらすことを示した.今後,多数例における長期的な肝線維化に与える影響を検討する必要がある.