メディカルスタッフプログラム2(JDDW)
10月29日 14:00–17:00 第11会場(福岡国際会議場 502+503)
MS2-5指

在宅医療で身に付けるべき歯科口腔健康の基本知識

樺沢 勇司
東京医歯大大学院・健康支援口腔保健衛生学
臨床,特に訪問医療において歯科疾患を持つ患者さんに接する機会は,少なくないと考えられます.医師が歯科疾患の存在に留意した際には歯科医師と連携して対応を行うと思いますが,医科と歯科との医療連携はいまだ十分ではない現状があります.私が2019年-2020年に行った医科歯科連携についての全国的調査研究(厚生労働科学研究費;19IA1009)を行った結果からは,医師は歯科疾患を実際に診察する機会が少なく,歯科疾患を意識する機会は直接の歯科医師との直接の診療連携によること.歯科に紹介する際には紹介状の作成はせず口頭にて歯科受診を薦めている場合も多いこと.歯科との連携の契機は同じ病院内あるいは地域であることが多いこと,そのため地域における患者に関するカンファレンスは一定の効果を持つと考えられること.また,歯科への紹介の障害として,紹介書作成の煩雑さやシステムの問題というよりは,歯科疾患への理解の不足が考えられ,連携におけるメリットは感じながらも,実際の歯科との連携機会の不足が認められました.一方で,医科と歯科との医療連携の懸け橋として,私が着目している,歯科衛生士は,在宅歯科診療,往診等への参加が約4割程度であり,全身疾患と歯科に関する理解や,地域における多職種の連携について更なる教育機会の充実が必要とされています.こうした背景の下,本シンポジウムのテーマである高齢者医療における多職種連携をより充実させる上では,高齢患者に認められる,口腔健康機能の低下に対する理解を加えて考えねばならない.具体的な口腔健康管理の内容については,私の本学での経験から,「口腔乾燥への対応」,「口腔衛生不良,非経口剥離上皮膜への対応」,「口腔粘膜炎,口腔カンジダ症への対応」,「摂食嚥下障害への対応」が多く,次いで「歯科疾患への対応」が中心であると考えられる.本シンポジウムにおいては,特にこうした訪問医療の対象となる高齢患者の口腔健康の課題について私見を述べさせていただくとともに,その口腔健康管理の基本について紹介させていただきたいと考えている.
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