メディカルスタッフプログラム1(JDDW)
10月28日 9:00–12:00 第11会場(福岡国際会議場 502+503)
MS1-7指

新型コロナウイルス感染症対策の今後

脇田 隆字
国立感染症研究所
COVID-19は2019年末から流行が始まり,瞬く間に全世界にその流行が拡散した.WHOの緊急委員会は2020年1月31日にCOVID-19を国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態に該当すると発表した.わが国では1月下旬から武漢市および湖北省在留邦人の帰国チャーター便対応,また,2月初めにはクルーズ船における船上隔離への対応に追われた.3月上旬から海外との関連が疑われる事例が増加し,3月下旬に都市部で感染者数が急増した.3月28日に基本的対処方針が発表され,4月7日に最初の緊急事態宣言が発出された.感染者数は4月初旬をピークとして,減少に転じ,5月25日には解除された.しかし,その後も大都市を中心として,感染者が増加した.9月以降,首都圏で感染者数が下げ止まるも,年末を迎え大きな感染拡大となり,2021年のはじめには再び緊急事態宣言が発出された.2020年末からは変異株の出現による感染拡大を繰り返した.アルファ株の侵入と流行,さらに2021年の5月以降にはデルタ株の流行があり,緊急事態宣言やまん延防止等重点措置による対策が繰り返されている.9月以降感染状況が急速に改善したが,年末からはオミクロン株の侵入があり,2022年2月初旬には新規感染者の報告数が全国で10万人を超える日もあった.3月下旬の現在新規感染者数は減少傾向にあるが,オミクロン株の流行はデルタ株と比較して重症者数は少ないが,高齢者の感染による死亡者数が多い.これにはコロナ感染による直接の死亡だけではなく,基礎疾患の悪化などによる死亡も多く含まれる. 新型コロナワクチンの接種が2021年2月頃から始まり,全国民の約8割が2回の接種を終え,現在3回目接種も進んでいる.しかし,現在流行しているオミクロン株はデルタ株と比べると免疫逃避能が高く,ワクチンの有効性が減弱している.さらに,抗ウイルス薬や抗炎症薬などによる治療法も開発が進んでいる.今後も,新たな変異株による流行の繰り返しが危惧されるが,ワクチン接種を進め,検査体制の拡充,新規治療法の導入と医療提供体制の拡大により,早期の感染制御を期待したい.
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