メディカルスタッフプログラム1(JDDW)
10月28日 9:00–12:00 第11会場(福岡国際会議場 502+503)
MS1-2指

感染防止対策の考え方

國島 広之
聖マリアンナ医大・感染症学
2019年末に発生した中国浙江省武漢で発生した新型コロナウイルス感染症は,瞬く間にパンデミックとなった.多くの医療従事者が罹患し,医療施設におけるクラスターが発生している.厚労省の統計では2022年2月末日現在で2万人以上の医療従事者が労災を申請している.医療施設ではCovid-19の診療のために,様々なファシリティーマネジメントが必要である.入院病床では,病棟全体もしくは一部を新型コロナウイルス感染症患者,疑似症患者でそれぞれ隔離し,患者のいるエリアをレッドゾーン,清潔区域をグリーゾーンとする.外来では,空調,サーキュレータ,換気扇,受付でのパーテーションなどの活用が行われる.日本感染症学会会員を対象としたアンケート調査では,初発者が判明した時点では既に感染が拡がっている事例が多くみられている.接触時間の長い患者-看護師間や,マスクを着用していない患者からの伝播を認めた.入院時のPCR 検査が陰性であったり,濃厚接触者以外の接触者での罹患事例もみられた.Covid-19は発症2日前から周囲への感染性を有し,潜伏期間は約2-6日である.接触者への初回検査は同一感染源からの同一潜伏期間である場合に確認することができる.潜伏期間の初期では検査は陰性となるため,その後の二次発生を評価する際には,曝露後に改めて検査を行うこと,潜伏期間中は十分な健康観察を行う必要がある.したがって,職場内や病棟内で患者が発生した場合は,周囲の患者の転院・転棟・転室歴を速やかに確認し,経時的な複数回のPCR検査で陰性が確認されるまでは,転院・転棟・転室を控えることが感染拡大防止に繋がるポイントである.ワクチン接種に加えて,手指衛生,マスク着用,換気や三密(密集・密接・密閉)回避など,感染症対策を組み合わせることが重要である.加えて,ゼロリスクとはならないことを念頭に,発生時における対応も十分に準備していく必要がある.今後も地域においてより一層,情報共有や連携,支援体制の構築を行うことが期待されている.
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