メディカルスタッフプログラム1(JDDW)
10月28日 9:00–12:00 第11会場(福岡国際会議場 502+503)
MS1-1指

COVID-19の臨床

大曲 貴夫
国立国際医療研究センター・国際感染症センター
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)では多くの場合は咽頭痛は微熱などの軽い風邪の症状が1週間程度続いた後徐々に軽快していく.しかし一部の患者では発症後1週間前後から咳や高熱が出始め,肺炎を起こす.甚だしい場合には進行性の呼吸不全を来たし,人工呼吸や膜型人工肺による治療必要になる場合がある.ワクチンの接種率の向上とオミクロン株などの従来よりも重症化率の低い株の流行に伴い,全体として重症度は低下傾向にある.レムデシビルはRNAウイルスに対し広く活性を示すRNA依存性RNAポリメラーゼ阻害薬である.2020年5月7日に国内で特例承認制度に基づき薬事承認された.COVID-19の重症化の機序として,免疫系の調整不全が起こってサイトカインの異常放出が起こり,結果として全身で細胞障害が進行することが考えられている.この過程に介入するための治療として免疫調整薬としてデキサメサゾン,バリシチニブが日本でも認可され用いられている.また,発症後早期の軽症-中等症1のハイリスク例の重症化を防ぐために抗体カクテルおよびモルヌピラビルなどの内服の抗ウイルス薬が利用されるようになった.流行の1-5波では中等2および重症の例を如何に早期に入院させて対応するかが重要であった.当院でも一般医療を一部縮小してこの対応にあたった.第5波では重症化を防ぐための自宅療養者への医療提供,およびハイリスク者への抗体製剤や内服薬の投与,大流行時に一刻も早く患者に治療を施すための臨時の医療施設の開設,中等症2および重症の例を収容できるためのベッド数の拡充が求められた.そして第6波では圧倒的多数である自宅療養者への対応と,高齢者を中心とした中等症-重症患者への対応が課題となった.
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