パネルディスカッション15(消化器外科学会・消化器病学会・消化器内視鏡学会)
10月29日 14:30–17:00 第6会場(福岡国際会議場 203+204)
外PD15-9
局所進行膵癌の手術前の化学療法が及ぼすstromal ratio変化と肝転移再発との関連
高野 重紹1
共同演者:川原 健治1, 大塚 将之1
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- 千葉大・臓器制御外科
【目的】BR膵癌に対する標準治療は術前療法後に手術が行われるが,その効果判定にはMD-CTでの軟部陰影評価や腫瘍マーカーの有意な低下が主に用いられている.膵癌は間質によりdrug delivery効率を妨げ,抗癌剤治療効果の低下を来すとされるが,持続的な間質量減少により間質のbarrierが失われることで,悪性度の高い腫瘍に変化させる事が報告され注目されている.今回,化学療法(NAC) Gem+nab-PTX(GnP)療法もしくはGem+S-1(GS)療法後に根治膵切除を行った症例群(NAC-GnP, NAC-GS)と手術先行(UpS)群における間質量と転移再発形式について検討し,NACによる間質変化や術後再発形式など臨床病理学的因子との関連を評価した.【方法】2008年3月から2019年12月に当科で根治切除された切除可能境界型BR膵癌120例中,GS, GnP療法以外の化学療法症例とR2切除を除いた104例の切除標本に対しMasson’s trichrome染色と画像解析ソフトを用い膵癌間質量の定量化を行い,癌細胞と間質の比率(stromal ratio)を算出,Ki-67発現や再発形式との関連を解析した.【成績】104例(UpS群:44例,NAC-GnP群:28例,NAC-GS群:32例)を間質量の多寡で2分すると,3群間でtumor volumeに差は認を認めず,低stromal ratio群は有意に予後不良であり(p=0.002),特にNAC群で肝転移再発が有意に多かった(p=0.007).次にD-CTでNAC後の腫瘍量変化率と肝転移再発との関連を確認すると,CT上の変化とは関連を認めなかった.Ki-67発現の多寡をUpS, NAC-GnP, NAC-GSの3群で比較すると,NAC-GnP群ではUpS群,NAC-GS群と比較し有意にKi-67発現が高かった.また,Ki-67発現はstromal ratio別で比較すると,UpS群では差を認めなかったが,NAC群では低stromal ratio群で有意に高かった(p=0.045).【結論】NAC後の間質量の少ない膵癌症例は術後肝転移再発を来し予後不良であることから,NACによる微小環境の変化を包括的に評価する必要があることが示唆された.今後の膵癌新規治療戦略の構築につながる重要な知見であると考えられた.