メディカルスタッフプログラム2(JDDW)
10月29日 14:00–17:00 第11会場(福岡国際会議場 502+503)
MS2-2

高齢終末期患者の在宅看取りを可能にする,病院からの単回訪問診療の試み

柳橋 崇史1
共同演者:國司 洋佑1, 吉江 浩一郎2
1
神奈川県立足柄上病院・消化器内科
2
神奈川県立足柄上病院・総合診療科
【背景】高齢患者は,在宅での終末期医療を希望することが多いが,病院から在宅への移行には困難を伴う.当院では本人・家族の不安を軽減し,地域の訪問診療医への主治医移行をスムーズに行うため,病院からの単回訪問診療を行っている.
【方法】高齢患者が在宅終末期医療を希望した場合,当院では患者本人,患者家族,主治医,在宅担当看護師,地域連携室担当者,ケアマネージャー等で話し合う場を設ける.在宅医療の方針が決定した場合には,地域の訪問診療医や訪問看護師等と連携をとり,初回訪問日を決定する.初回訪問には地域の訪問診療医に加えて訪問看護師やケアマネージャーにも同席してもらい,当院からも主治医と看護師1名が訪問する.患者宅で直接申し送りを行い,状態が変化して病院搬送を要する場合には必ず当院で引き受けるという,在宅療養後方支援契約を締結する.初回訪問後は在宅担当医が主治医となるが,その後も当院への定期的な状況報告をお願いしている.
【成績】単回訪問診療は2014年から開始し,2021年12月末までにのべ312人の患者に行われ,導入時の平均年齢は82.2±10.0歳であった.開始当初は30%台であった在宅看取り率は近年では60%以上まで上昇し,連携医療機関数も45施設まで増加している.
【考察】単回訪問診療の最大のメリットは安心感である.患者宅で病院主治医と在宅担当医が顔を合わせることで,診療情報提供書のみでは伝わらない詳細な申し送りが可能となる.また,状態悪化時の受け入れを病院側が保証することで,患者・家族の不安は軽減され,在宅担当医も患者を引き受けやすくなる.終末期や病態が複雑な患者でもぎりぎりまで在宅ケアを続けることが可能となり,結果として在宅看取り率は上昇する.単回訪問診療は終末期高齢者の在宅看取り実現に役立つ方法であるが,マンパワー不足と診療報酬整備の問題があり,安定的な運用に向けては課題も残る.
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