デジタルポスターセッション外044(消化器外科学会)
10月28日 14:36–15:06 第15会場(マリンメッセ福岡 アリーナ デジタルポスター会場)
外P-283

高齢者早期胃癌において腹腔鏡下幽門保存胃切除術は筋肉量維持に寄与する 優秀演題賞 若手奨励賞

寺山 仁祥1
共同演者:大橋 学1, 幕内 梨恵1, 速水 克1, 井田 智1, 熊谷 厚志1, 佐野 武1, 渡邊 雅之1, 布部 創也1
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がん研有明病院・消化器外科
【背景】早期胃癌は長期予後が期待できることから,腫瘍学的効果を維持しつつ,術後QOLを考慮した術式選択が肝要である.特に,胃切除後に見られる体重減少や筋肉量減少は,高齢者において致命的となり得る.近年,幽門保存胃切除術が体重減少を抑える術式として注目されているが,手技の煩雑さや老化に伴う消化器機能低下を考慮し,高齢者は適応としない場合も多い.本研究の目的は,高齢者に対するその有用性を明らかにすることである.【方法】当院で2006年4月から2018年4月までに腹腔鏡下胃切除術を施行した,75歳以上のM領域cT1N0M0胃癌患者275名を対象とした.傾向スコアマッチングによる共変量調整を行い,幽門保存胃切除術(LPPG群)43名,幽門側胃切除術-Billroth1法再建(LDGB1群)43名の2群に分け,手術関連因子の他,術後3年間における栄養指標の推移,及び体重変化,筋肉量変化を後方視的に比較検討した.統計的有意差はp<0.05とした.【結果】両群で術後合併症頻度に差は見られなかった.術後1年目の体重減少および骨格筋減少量は,LDGB1群よりもLPPG群の方で有意に少なかった(LDGB1 vs. LPPG; 体重:89.4% vs. 95.2%,骨格筋量10.5% vs. 5.5%, p<0.01).その後2年間で,LPPG群の体重はLDGB1群とほぼ同程度に収束するものの,骨格筋量の減少はLPPG後では生理的範囲内の減少に留まっており,LDGB1後と比較して有意に維持されていた(LDGB1 vs. LPPG; 15.5% vs. 8.5%, p<0.01).【結論】高齢者早期胃癌に対する幽門保存胃切除術は,安全に施行可能であるだけでなく,幽門側胃切除術に比較して体重減少が緩やかであり,骨格筋量については長期的に維持されていた.高齢者において,幽門保存胃切除術は推奨可能な術式であると考えられた.
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