パネルディスカッション9(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会)
11月6日 9:00–11:30 第1会場(神戸国際展示場2号館 ホール北)
外PD9-10
当院における局所進行切除不能膵癌に対する治療成績の解析 若手奨励賞
吉田 雄太1
共同演者:松本 逸平1, 竹山 宜典1
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- 近畿大病院・外科(肝胆膵部門)
【目的】近年,化学療法や化学放射線療法(CRT)の進歩により,局所進行切除不能膵癌 (unresectable locally advanced pancreatic cancer : UR-LA PC)に対するconversion surgery (CS)の報告が増加している.その適応に関しては依然,議論の的である.当院では毎週,内科,外科合同のキャンサーボードで切除可能性について検討する.化学療法は内科で行い,外科でも定期的に全身状態のチェックを行う.CSの可否を再検討し,十分なインフォームドコンセントを行う.当院におけるUR-LA PC およびCSの成績,予後因子について検討した.【方法】症例は2014年-2021年に当院で治療を行ったUR-LA PC 78例の内,CSを施行した23例について後方視的に解析した.適応はCA19-9の正常化,RECIST評価,PS,PET-CTも併用し総合的に判断する.主要動脈剥離面での断端陽性が危惧される場合は,同意取得後CRTを追加する.【成績】初回治療からの観察期間中央値は13ヶ月,23例 (29.5%)にCS を施行しえた.治療開始から手術までの期間の中央値は7ヶ月,RECISTではPR 17例,SD 6例,手術はSSPPD 11例,DP-CAR 9例,DP 2例,TP 1例で,R0切除は19例 (83%)であった.術後合併症はGrade B以上の膵液瘻1例,Clavien-Dindo分類grade III以上が4例,治療関連死亡は1例であった.Evans分類はgrade Iが1例,IIa 5例,IIb 9例,III 5例,IV 2例であった.CS後再発は12例(54.5%)に認め,手術から再発までの期間の中央値は7(2-33)ヶ月,6例(27.3%)は術後早期再発(6ヶ月以内)であった.再発部位は腹膜播種6例,肝2例,局所1例であった.CS施行群と未施行群の比較では生存期間中央値は,CS群が41ヶ月,未施行群13ヶ月でありCS群で有意に生存期間延長を認めた (p=0.0001).多変量解析ではCSのみが独立した予後因子であった (HR:3.92; 95%CI, 1.99-8.28).【結論】UR-LA PCに対するCSは,生存期間を延長する可能性が示唆されたが高い再発率や早期再発も問題でありその低減には症例集積による緻密で有効な手術適応やタイミングの把握が重要である.
- 索引用語1:conversion surgery
- 索引用語2:UR-LA