ワークショップ19(消化器内視鏡学会・消化器病学会・消化器がん検診学会)
11月4日 9:00–11:20 第2会場(神戸国際展示場2号館 ホール南)
内W19-4

EBウイルス関連早期胃癌の臨床病理学的検討

鈴木 悠悟1
共同演者:菊池 大輔1, 布袋屋 修1
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虎の門病院・消化器内科
【緒言】Epstein-Barr Virus (EBV)が発癌経路に関与し発癌に至ったEBV関連胃癌はポストピロリ時代において注目されている.一方で粘膜下層までに留まるEBV関連早期胃癌(EBV associated ealry gastric cancer: EBEGC)における内視鏡像,病理組織像についての報告は限られている.そこで今回,内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を施行した胃癌症例をEBV感染の有無で分類し比較検討を行いEBEGCの内視鏡所見,病理組織学的所見を明らかにすることを目的とした.【方法】2014年1月1日から2016年12月31日までに当院でESDが施行され症例のうちTissue Microarray法によって検体を再包埋することが可能であった529症例618病変を対象としてEBER-ISH法が陽性であった病変をEBEGC群,陰性であった病変をcontrol群に分類した.NBI拡大観察で微細模様が消失し,細かく密度の高い不整な微小血管構造を呈する所見をendoscopic lace pattern (ELP)と定義し両群の内視鏡像を含めた臨床像,病理組織像について比較検討を行った.【結果】12病変(1.9%)10症例がEBER-ISH陽性であった.EBEGC群は有意に萎縮境界に病変が認められ(83.3% vs 37.5%; p<0.01),M領域またはU領域に局在しており(91.7% vs 48%; p<0.01),赤色調を呈していた(100% vs 64.5%, p<0.01).ELPはEBEGC群で有意に観察された(6 vs 15 lesions; 50% vs 2.5%, respectively; p<0.01).病理学的にはEBEGC群で有意に深達度が深く(M/SM1/SM2, 7/2/3 vs 545/39/22; p<0.01),低分化型癌が多く認められた.病変の位置,色調,NBI拡大観察所見を踏まえた場合のEBEGC陽性的中率は55.6%であった.【結語】EBV関連胃癌は,EBV陰性胃癌と比較するとリンパ節転移率が低く大規模メタアナリシスで予後良好であったと報告されており,今後,EBV感染の有無が胃癌に対する治療戦略に影響を与える可能性が示唆されている.本検討では術前にEBEGCを想定できる可能性が示唆された.
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