ワークショップ8(消化器外科学会・消化器病学会・肝臓学会・消化器がん検診学会)
11月5日 14:00–16:30 第2会場(神戸国際展示場2号館 ホール南)
消W8-11

膵癌早期診断における血中アポリポ蛋白A2アイソフォームの意義

小林 隆1
共同演者:佐藤 悠1, 本田 一文2
1
神戸大大学院・消化器内科学
2
国立がん研究センター研究所・早期診断バイオマーカー開発部門
【目的】アポリポ蛋白A2(ApoA2)はプロテオミクスによって膵癌の血中バイオマーカー候補として報告されて以来,着実に検証が重ねられてきた.ApoA2には5つのアイソフォームが見いだされ,その構成比は膵癌ステージIにおいても既に変化がみられることが明らかになった.本研究は,膵癌検診における血中ApoA2アイソフォーム測定の意義を明らかにすることを目的として実施した.【方法】本研究は倫理委員会の承認を受け,前向き研究として実施した.国内6施設で検診を受診した成人を対象とし,検診と同時に血中ApoA2アイソフォームを測定した.ApoA2アイソフォーム2型の濃度が基準値以下の場合を陽性とし,陽性者には画像検査(CE-CT,MRCP,EUS)による二次精査を推奨し,その結果を解析した.さらに血中ApoA2アイソフォームの構成パターンと受検者背景および二次精査結果との関連を解析した.【成績】5120人の登録中,陽性者は84人であった.受検者の背景因子のうち既知の膵癌リスク因子とApoA2アイソフォーム2型には明らかな相関を認めなかった.陽性84人のうち54人が二次精査を受け,最終的に膵癌1人,IPMN9人,膵嚢胞性疾患5人,慢性膵炎3人,自己免疫性膵炎1人,膵神経内分泌腫瘍1人,その他膵疾患6人が検出された.検出された各膵疾患と血中ApoA2アイソフォームの構成パターンには一定の傾向を認めなかった.【結論】血中ApoA2アイソフォーム2型をバイオマーカーとする膵癌検診は,一般集団から膵疾患を高率に拾い上げることが明らかになった.特に膵癌高リスク疾患を高率に検出しており,囲い込みとサーベイランスにおいて有用な可能性がある.ApoA2アイソフォームの構成パターンについては有意な結果を示すには至らなかったが,膵外分泌能との関連を示唆する文献報告も見られており,今後,血中ApoA2アイソフォームは膵癌の早期診断や病態解明に寄与し得るユニークなバイオマーカーとして期待される.
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