パネルディスカッション3(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会)
11月3日(木) 9:00–12:00 第3会場(ポートピアホテル南館 ポートピアホール)
肝PD3-14

糖尿病を有する肝線維化進展例は肝癌高リスク群である

青木 智子1,2,3
共著者:飯島 尋子1,2, 西口 修平2
1
兵庫医大超音波センター
2
兵庫医大・内科(肝・胆・膵科)
3
公立八鹿病院・内科
【目的】非B非C肝癌は増加しており発癌リスクの高い症例の囲い込みが急務とされている.糖尿病(DM)の第一死因は癌死で特に肝癌が多く,非B非C及びC型肝癌からの発癌とDMの関係を検討した.【方法】(1) 2007年~2015年に加療を受けたSVR後肝癌の詳細を検討し,(2) 2008年10月~2013年12月に超音波shear wave imaging(VTQ, Siemens ACUSON S2000/3000®)を測定した発癌歴のないC型肝炎658例(男293例),(3) NBNC肝炎症例909例(男409例)を対象としたretrospective cohort studyを行い,生存分析,cox回帰分析で肝発癌に寄与する因子を検討した.【成績】(1) HCV肝癌654例中SVR後肝癌は21例(3.2%;初発年齢70.3歳,男性12例)存在した.SVR後3年以内に肝発癌した症例は7例にとどまり,10年以上経過してから6例が発癌に至った.多量飲酒者や臨床的肝硬変,DMでの発癌が目立った.(2) 観察期間中に47例が肝発癌に至った.Cox回帰分析で,肝発癌のリスク因子は年齢>60歳,男性,VTQ≧1.35m/s,DM加療歴(+),HT加療歴(+)であることが示され,HRは順に2.5,2.85,2.70,3.02,1.85であった(P<0.05).(3) alcohol10例,sAL3例,NASH5例,AIH5例(重複有),その他1例の計23例が肝発癌に至った.Cox回帰分析で,肝発癌リスク因子は年齢>65歳,血小板≦16.5万,VTQ≧1.35m/s,DM加療歴(+)であることが示され,HRは順に3.22,5.77,18.0,4.0であった(P<0.05).Kaplan-Meier(Log Rank検定)ではDM加療のうちインスリン分泌促進薬を使用している症例で発癌率が高い傾向にあり,VTQ≧1.35m/sかつDMあり,VTQ≧1.35m/sかつDMなし,VTQ<1.35m/sかつDMあり,VTQ<1.35m/sかつDMなしの4群に分けると,この順に有意に累積肝発癌率が高いことが示された(P<0.001).【結語】非B非C及びC型肝炎症例では,DMの有無とShear wave imagingで肝癌高リスク群を囲い込める可能性が示され,DMを有する肝線維化進展群を慎重にスクリーニングすべきであると考えられた.
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