ワークショップ3(肝臓学会・消化器病学会・消化器外科学会・消化器がん検診学会)
11月3日(木) 9:40–12:00 第4会場(ポートピアホテル南館 大輪田A)
肝W3-1

Shear wave elastographyによる肝腫瘍診断

西村 貴士1,2
共著者:西口 修平2, 飯島 尋子1,2
1
兵庫医大超音波センター
2
兵庫医大・内科(肝・胆・膵科)
【目的】Shear waveによる硬度診断は肝線維化評価に広く使用されており,肝腫瘍硬度診断にも応用されている.また肝発癌には背景肝の線維化評価も重要である.今回我々はShear wave(VTQ;ACUSON s2000/3000,SWE;Aplio500)による肝発癌リスクと肝細胞癌診断における有用性について検討した.【方法】(1)2008年10月~2013年12月にVTQを測定した慢性肝疾患1846例を対象とし,発癌例と非発癌例について検討した.(2)2008年10月~2015年12月にVTQを測定した肝腫瘍322例(肝血管腫;HEM 97結節,肝細胞癌; HCC149結節,転移性肝癌; MET’s; 76結節)を対象とした.またSWEも同時に測定した肝腫瘍(HEM 9結節,HCC10結節,MET’s; 8結節)で2D shear waveの優位性についても検討を加えた.【結果】(1)平均観察期間は51ヶ月で肝発癌を83例に認めた.非発癌例,発癌例の背景肝のVTQ(m/s)はそれぞれ1.40,1.95と発癌例で有意に高値であり(P<0.0001),Cut off値1.35m/sとしたときのROCは0.773であった. (2)腫瘍と非腫瘍部のVs値はそれぞれHEM 1.44, 1.14,HCC 1.81, 1.88,MET’s 2.70, 1.25と腫瘍はHEM,HCC,MET’sの順に有意に高値となり(p<0.001),非腫瘍部はそれぞれ1.14,1.88,1.25とHCCで有意に高値であった(p<0.01).MET’sはサイズ増大に伴いVs値が上昇し,腫瘍系と有意な正の相関関係を示した.HCCについては分化度別,造影超音波検査での動脈血流の多寡でもVs値に差は認めなかったが,haloの有無別ではhalo有りで有意にVs値が低かった.MET’sでは原発巣が膵癌の症例においてVs値が低い傾向にあった. また,VTQとSWEを同時に測定したHEM,HCC,MET’sのVTQ(m/s)はそれぞれ1.41,1.95,3.04であり,SWE(m/s)はそれぞれ1.95,2.81,4.05とVTQ,SWEともにHEM,HCC,MET’sの順に有意に高値となった(p<0.05).【結論】VTQは肝発癌リスク予測因子として有用であり,VTQ, SWEともに肝細胞癌の鑑別診断に同等に有用であった.肝細胞癌診断には背景肝を含めた肝硬度診断が重要である.
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