メディカルスタッフプログラム1(JDDW)
11月5日(土) 9:00–12:00 第10会場(ポートピアホテル本館 和楽)
MS1-1

緩和ケア医が工夫できること

奈良林 至
がん研有明病院・緩和治療科
がんそのものに対しての外科治療,内科治療,放射線治療の進歩はめざましいものがあるが,現在のがん医療を「緩和ケア」「チーム医療」ということばを使わずに説明することは困難であろう.それだけ重要なものであるなら,日々の臨床において「緩和ケア」も「チーム医療」もそれを提供する側・される側いずれもが満足のいく形で実践し享受できているだろうか?残念ながら,Yesと答えられる状態ではないと私は感じている.
早期からの緩和ケア,がんと診断された時からの緩和ケア・・・こう言われるようになって久しいが,緩和ケア医への紹介のタイミングは多くの場合がん治療医の判断に委ねられており,患者家族が自ら希望して緩和ケア医を受診することは稀である.緩和ケア医が圧倒的に不足している現状で,このがん治療医の判断はむしろ緩和ケア医が多忙になりすぎてバーンアウトするのを防ぐことに役立っているかもしれないが,患者家族の苦痛は軽減されない.
主治医が抗がん剤治療中の患者に,今は必要ないけど今後のために緩和ケア医と面識を持っておく方がよいから,と緩和ケア科の受診を勧める.苦痛のない段階から緩和との関係を構築できたと満足する主治医に,外来の看護師が「先生,○○さんに緩和受診を勧めたんですか?患者さん,ものすごく落ち込んでいましたよ.」と報告すると,今度は主治医ががっかりする.今日もどこかで起きている光景である.
主治医からの紹介で緩和ケア科を受診する形ではなく,初診時,あるいはがんと診断がついた時に,通常の診療の一環として緩和ケアを受診するプログラムを,当院ではがん治療医の発案で緩和ケア医,看護師,薬剤師,栄養士,ソーシャルワーカーらが検討し,一部の難治がん患者に運用を始めた.いわゆる終末期緩和ケア以外の場ではなかなか前面に出にくい緩和ケア医ではあるが,まさに普段の医療チームで問題を共有し検討することで,現状改善に向けた一歩を踏み出したところである.
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