メディカルスタッフプログラム2(JDDW)
11月5日(土) 14:00–17:00 第10会場(ポートピアホテル本館 和楽)
MS2-5

炎症性腸疾患診療における薬剤師の役割

八木澤 啓司
北里大北里研究所病院・薬剤部
近年,薬物療法の急速な発展を背景に薬剤師のチーム医療への参画が求められている.炎症性腸疾患(IBD)診療においても薬物療法の進歩が目覚ましく,患者のQOLは劇的に改善してきているが,同時に薬物療法は複雑化し,また副作用も多様化した.そのような状況の中,薬剤師がチームの一員として医師と違う視点から診療に参加することは,患者の理解を助けQOL向上に役立つのみならず,医薬品の適正使用,医師・看護師をはじめとしたメディカルスタッフの負担軽減,リスクマネジメントなど多面的に貢献できるものと考えられる.当院では2013年に炎症性腸疾患先進治療センター(IBDセンター)が開設されたのを契機にIBDチームが発足した.現在3名の薬剤師がチームに参加し,カンファレンス等を通じ医師や他のメディカルスタッフと治療方針・患者情報を共有し,専門性の高い関わりが持てるよう取り組んでいる.業務内容は,主に入院患者への服薬指導,薬効・副作用のモニタリング,TDM解析,薬剤に関する質問・相談応需など多岐に渡る.特に服薬指導は,重篤で比較的頻度の高い副作用を持つIBD治療薬の適正使用を進める上で,チームの薬剤師の最も重要な役割と考えている.また治療方針決定には患者自身の理解に基づいた意思を尊重することが重要であり,意思決定のサポートをチームとして取り組んでいる.薬剤師はカンファレンスで使用の可能性を議論した薬剤について事前に患者に説明し,患者意向を尊重しながらもスムーズな薬剤の選択・導入が可能となるよう心がけている.
慢性疾患であるIBDでは外来も含めた長期ケアが不可欠であり,特に診療時間に制限の多い外来における服薬指導の充実は当面の課題である.当院ではIBDセンターが発足してまだ3年に過ぎず,IBDのチーム医療において薬剤師に何が求められているのか,今後も考えていく必要がある.
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