10月24日(金) 9:00–12:00 第12会場(神戸国際会議場 メインホール)
肝W8-11

HBV陽性者における肝脂肪化と代謝マーカーの検討

榎本 平之1
共著者:斎藤 正紀1, 西口 修平1
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兵庫医大・内科(肝・胆・膵科)
【背景】HBe抗体陽性かつHBV-DNA低値のHBV感染者は通常無症候性キャリアとなるが,ALT値の異常を示す症例がしばしば見受けられ,HBV以外に起因する肝障害の機序が推定される.今回肝組織像やHBVマーカー,代謝マーカーとの関連について検討を行った.【方法】当科で肝生検を施行したB型慢性肝炎患者197例のうち,核酸アナログ製剤の治療歴がなくHBe抗体陽性でHBV-DNAが低値(5 Log copies/mL以下)の症例を選定し,ALT値が正常値(30以下)の群と異常値(31以上)の群との背景因子について検討した.なお本研究は倫理委員会の承認研究の一環として行われ,全例で文書同意を得ている.【結果】核酸アナログ未治療のHBe抗体陽性例は72例で,うち44例がHBV低値であった(ALT異常16例,ALT正常28例).ALT値の相違を反映して,AST・ALT・γ-GTPは,ALT異常値群が有意に高値であった.しかしながらHBV関連マーカー(HBV-DNA量, HBs抗原量, HBcr抗原量)には2群間で差がなく,ALT値上昇へのHBV自体の関与は低いと考えられた.組織学的検討ではALT異常値群で有意にA因子が高値であったが,それに加えて脂肪化が強い傾向が認められた.代謝関連因子についてはALT異常値群でBMI (24.8 ± 5.3 vs. 22.5± 3.2, p<0.05) とHOMA-R(1.75 [0.63-8.78] vs. 1.15 [0.45-2.74], p<0.05)が有意に高値で,また血清フェリチン値も有意に高値であった(159 [7.3-685.0] vs. 75.4 [2.5-231.0], p<0.01).【結論】NASHやHCV症例に比べると,HBV症例での肝脂肪化や代謝異常に関する検討は少ないが,HBV陽性者においても肝の脂肪化とインスリン抵抗性,鉄の蓄積といった代謝異常がALT異常に関与する可能性が考えられた.