10月25日(土) 9:00–12:00 第8会場(ポートピアホテル本館 偕楽1+2)
肝S14-11

NBNC肝癌の成因と肝癌囲い込み戦略

青木 智子1,2
共著者:飯島 尋子1,2, 西口 修平1
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兵庫医大・内科(肝・胆・膵科)
2
兵庫医大超音波センター
【目的】NBNC肝癌は増加しており,発癌リスクの高い症例の囲い込みが急務とされている.NBNC肝癌の成因について検討するとともに,非侵襲的検査でNBNC肝癌の高危険群を囲い込めるか検討した.【方法】(1)当院でのNBNC肝癌の成因を整理し,(2)2008年10月~2013年12月に非侵襲的線維化診断(VTQ)を測定して追跡し得た発癌歴のないNBNC肝炎症例744例を対象として,経過中に発癌した症例(発癌群21例)と発癌しなかった症例(発癌なし群723例)の差異を多変量解析で比較検討した.【成績】(1)2007年以降当院で加療を受けたHCCは540例存在し,その内訳はHCV361例,HBV58例,NBNC121例であった.NBNC121例中,80g/day以上,20~80g/day,20g/day未満の飲酒歴を持つ症例は各々42例,32例,47例であった.(2)単変量解析では,性別(P=0.033),年齢(P<0.001),血小板(P<0.001),VTQ(P<0.001),FIB4 index(P=0.034),ヒアルロン酸(P=0.001),空腹時血糖値(FBG)(P<0.001)で発癌群,発癌なし群の間に有意差を認めた.これらの因子を用いたロジスティック回帰分析の結果,VTQが高値で,血小板数が低く,FBGの高い症例(OR1.195/10mg/dl)で発癌リスクが高いことが示された(P<0.001).この中でVTQはAUROC0.834と最大で,距離最短法によるCut off値は1.35m/s(感度91%,特異度71%)であった.同様にFBGのCut off値は111.5mg/dl(感度71%,特異度73%),血小板数16.5万(感度76%,特異度69%)であった.NBNC肝癌のうち初発症例61例で検討すると,血小板数と発見時の腫瘍最大径は有意な正の相関を認めており(R2=0.254,P<0.01),単独検査による発癌リスク予測は危険をはらんでいると考える.Kaplan-Meier曲線(Log Rank検定)で比較すると,VTQ,血小板,FBGのうち2つ以上のリスクを持つ場合に有意に累積発癌率が高く,組み合わせ診断による発癌予測が有用であることが示された.【結語】Shear Wavesは,特にFBGや血小板と組み合わせることにより,NBNC肝炎症例での発癌予測に有用である可能性が示唆された.