10月24日(金) 9:30–10:11 第14会場(神戸国際展示場1号館 デジタルポスター会場)
消P-383

当院における胃静脈瘤治療の現状

岩田 恵典1
共著者:石井 紀子1, 由利 幸久1, 青木 智子1, 楊 和典1, 石井 昭生1, 橋本 健二1, 高嶋 智之1, 坂井 良行1, 會澤 信弘1, 池田 直人1, 田中 弘教1, 榎本 平之1, 斉藤 正紀1, 飯島 尋子1, 西口 修平1
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兵庫医大・内科(肝・胆・膵科)
【はじめに】食道静脈瘤は内視鏡治療の有用性が確立され,症例に応じて治療法が選択される.長期生存可能な肝硬変では,食道静脈瘤以外の胃や異所性静脈瘤に対しての治療も重要となってきた.当院での胃穹窿部静脈瘤(Lg-f)に対する治療の現状につき報告する.【対象と方法】2007年4月から2014年2月までに当院肝胆膵科を初診となった胃静脈瘤(Lg-f)35例を対象とした.太い腎静脈系短絡路が確認された24例にバルーン閉塞下逆行性経静脈的塞栓術(B-RTO)を行い,B-RTO困難例にHistoacrylによる内視鏡的硬化療法(HA-EIS)を10例,内視鏡的結紮術(EVL)を1例に施行した.治療適応とした症例は緊急出血例8例(B-RTO 4例,HA-EIS 3例,EVL 1例),予防例27例で,基礎肝疾患はB:C:アルコール:その他 1:15:10:9であった.肝予備能はChild-Pugh分類 A:B:C 15:16:4で,肝細胞癌合併は6例(17.1%)であった.【成績】肝予備能不良な緊急出血例1例はEVLを施行し追加治療を行わなかったが,その他の34例はHA-EIS,B-RTOを根治的に行った.全例で治療後胃静脈瘤の再発は認めず,永久止血が得られた.治療後にはHA-EIS群で2例(20.0%),B-RTO群で4例(16.7%)に食道静脈瘤が増大したためEISを追加した.合併症はChild C患者に対してB-RTOを施行した1例で術後早期に肝不全が進行し死亡した.HA-EIS群では1例で術後約2ヶ月後に胃静脈瘤からの再出血のため,追加治療として再度HA-EISを行った.術後経過観察中の死亡例は6例で,死因は全例肝不全および肝細胞癌の進行によるもので,静脈瘤からの再出血による死亡例は見られなかった.また,BRTO群とHA-EIS群の比較では平均生存期間に有意差は認めなかった.【結語】胃静脈瘤(Lg-f)治療では,HA-EISもB-RTOに遜色ない結果を得ることができた.しかし,肝予備能不良例では緊急時のB-RTOにより術後早期に肝不全での死亡例を経験しており,肝予備能に応じた治療法の選択が望まれる.