外P-399
高度脈管侵襲を伴う進行肝細胞癌に対する集学的治療
木戸 正浩1
共著者:福本 巧1,高橋 応典1,武部 敦志1,田中 基文1,蔵満 薫1,木下 秘我1,中馬 正志1,福島 健司1,浦出 剛史1,味木 徹夫1,松本 逸平1,新関 亮1,浅利 貞毅1,岡崎 太郎1,楠 信也1,小松 昇平1,宗 慎一1,具 英成1
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- 神戸大・肝胆膵外科
(はじめに)米国肝臓学会(AASLD)の治療アルゴリズム(BCLC staging)では脈管浸潤、他臓器転移、リンパ節転移を伴う肝癌を進行肝癌(Stage C)と呼び、治療の第一選択としてsorafenibを推奨している。しかしSHARP試験のサブ解析において、Stage Cの生存期間中央値(MST)はsorafenib群で4.1ヶ月となっており、満足出来るものではない。したがってStage Cに対するsorafenibを凌駕する治療法の確立が望まれる。(目的)門脈腫瘍栓(PVTT)が門脈本幹や対側にまで進展したいわゆるVp4 HCCに対し、安全かつ確実にPVTTを摘出しうるback flow pefusion (BFP) 法を考案した。この方法を用いて高度脈管侵襲を伴う進行肝癌に肝切除を行い、その後低侵襲性高用量化学療法である経皮的肝灌流化学療法(PIHP)を行う2段階療法(Dual treatment)を実践してきたので、その成績を報告する。(対象)1990年11月から2011年12月までに当施設で行ったDual treatmentにエントリーした92例のうち、Vp3, 4を伴う49例について検討した。(結果)49例の生存率は1年70%、3年24%、5年22%でありであった。そのうち完遂できた症例では1生74%、3生24%、5生22%であり、MSTは18.4ヶ月と良好であった。合併症としては胆汁漏、難治性腹水、創感染と大侵襲手術にもかかわらず比較的軽微なもので、mortalityはゼロである。(結論)高度脈管侵襲を伴う進行肝癌の場合、切除可能であれば短期成績でもsorafenibを上回る。しかし切除はあくまでも減量であり、長期予後を得るためには残肝の追加治療が必須となる。(今後の展望)主要肝静脈根部の高度腫瘍浸潤・圧排などによる切除不能例にはPIHPを先行させ、抗腫瘍効果が認められるや否や減量切除し、さらに術後再びPIHPを加える三段階療法も新たにスタートしている。これらの症例も含め、当施設での集学的治療について述べる。