検P-22
超音波検診へのカテゴリー分類導入における問題点
比佐 岳史1
共著者:荻原 毅2,佐々木 宏子2
- 1
- 佐久総合病院・内科
- 2
- 佐久総合病院・臨床検査部
【目的】日本消化器がん検診学会超音波部会委員会が提案したカテゴリー分類の問題点を明らかにすること。
【方法】2011年11月~2012年2月の間、当院人間ドックの上腹部超音波検査(US)においてカテゴリー分類を試験的に導入した。同期間中、カテゴリー4あるいは5と判断された病変は17病変であり、うち当院での精査未受検例の3病変を除く14病変(肝臓8病変、胆嚢2病変、膵臓2病変、大網1病変、副腎1病変)を対象とした。臓器別にUS所見と確定診断を検討した。
【結果】肝臓:8病変全てが最大径15mm以上の充実性腫瘤(高エコー3病変、等エコー1病変、低エコー4病変)であり、カテゴリー4と判断された。精査にて肝血管腫6病変、肝細胞癌1病変、splenosis1病変であった。背景肝をみると、肝細胞癌症例のみが慢性肝疾患像を呈し、慢性肝障害の原因としてアルコール性が考えられた。胆嚢:全2病変中、1病変が限局性の内側低エコー層の肥厚でカテゴリー4、他の1病変が径10mm大の有茎性隆起でカテゴリー4と判断された。精査にて前者は異常なし、後者は胆嚢内胆泥と診断された。膵臓:全2病変中、1例が径16mm大の多房性嚢胞で隔壁が密にみられカテゴリー4、他の1例が尾側主膵管の数珠状拡張を伴う充実性低エコー腫瘤でカテゴリー5と判断された。精査にて前者は拡張分枝、後者は通常型膵癌と診断された。大網:肝表面に接する単房性嚢胞を認め、腹腔内腫瘤としてカテゴリー4と判断された。大網嚢腫と診断された。副腎:右副腎に径17mm大の類円形腫瘤を認め、カテゴリー4と判断された。精査にて副腎皮質腺腫と診断された。
【結語】カテゴリー4で拾い上げられた肝充実性腫瘤の多くが肝血管腫であり、慢性肝疾患像を加味した評価が正確な悪性度診断に寄与する可能性がある。腹腔内病変において嚢胞や副腎の小さな類円形腫瘤は良性である可能性が高く、再考の余地があると思われる。