消P-472

マウスDSS腸炎に対するヒトアドレノメデュリンの効果

林 宣明1,2
共著者:鳴海 兼太2,富永 桂2,斉藤 奈津子2,吉田 功2,岡田 俊英3
1
福井県立病院・消化器内科
2
金沢大大学院・臓器機能制御学
3
石川県立中央病院
【背景と目的】アドレノメデュリン(AM)は,全身の組織で産生される生理活性ペプチドであり,血管拡張作用に加え,抗酸化作用,抗炎症作用など多彩な作用を有する。AMの炎症性腸疾患に対する効果、作用メカニズムの実験的解析を試みた。【方法】In vivoでは、BALB/cマウスを用い、3%デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)溶液の7日間自由飲水にて潰瘍性大腸炎モデルを作成した。DSS溶液飲水直前にヒトAM(225-900μg/kg)あるいは生理食塩水を腹腔内投与した。AM投与7日目に、臨床的重症度としてActivity indexを、組織学的重症度としてHistological scoreを、また、摘出大腸組織から抽出したサイトカインをELISAにて測定した。In vitroにおいて、(1)リポポリサッカライド(LPS)によるTHP-1細胞刺激に対するAMの効果、(2)Caco-2細胞において、wound-healing assayにてDSS,AMの効果を検討した。【結果】3%DSS自由飲水にて7日目にはDSS群で臨床的、組織学的に腸炎の発症を確認し、大腸組織では炎症性サイトカイン産生が増大した。AM群ではActivity indexやHistological scoreが有意に改善し、大腸組織でのTNF-αなどの炎症性サイトカインの有意な減少を認めた。LPS刺激によるTHP-1細胞からのTNF-α産生は、AM投与により、有意に低下。Caco-2細胞でのDSSによる創傷修復遅延がAMの投与により、有意に改善を認め、Caco-2細胞の遊走能を促進する可能性が示唆された。【結語】DSS腸炎の臨床的、組織学的所見がAMにより改善することが認められ、その機作として、全身や局所におけるTNF-αなどの炎症性サイトカインの抑制が関与すること、更に、AMの大腸組織への直接的な効果として、潰瘍周辺の細胞遊走能 の促進の関与が推測された。