肝P-12

B型慢性肝疾患の核酸アナログ治療症例におけるHBV DNA値とHBs抗原量の検討

長谷部 千登美1
共著者:細木 卓明1,西川 智哉1,藤井 常志1
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旭川赤十字病院・消化器内科
【目的】B型慢性肝疾患における核酸アナログ治療症例の多くは、HBV DNA値が低下し、検出限界以下になる症例もよくみられる。このような症例の治療中止の可否が問題であり、従来の報告ではHBコア関連抗原がその判断に有用とされていた。一方、長期間抗ウイルス治療を継続した症例の中に、HBs抗原が陰性化して完全治癒に至る症例も散見されるようになり、HBs抗原量もまた注目されるようになった。そこで今回、核酸アナログ治療によりDNAが低下した症例における、HBs抗原量と肝炎病態との関連を検討した。【方法】対象は、核酸アナログによる抗ウイルス治療を6ヶ月以上継続しているB型慢性肝疾患症例113例である。血中DNAレベルごとのHBs抗原量の分布、DNA低下群(DNAが2.1logIU/ml未満の症例)とDNA陰性化群との比較、HBs抗原陰性化例の特徴に関して検討した。HBV DNAはreal time PCR法、HBs抗原定量はCLIA法により行った。【成績】DNA陽性持続群は27例(24%)、DNA低下群は31例(27%)、陰性群は55例(49%)であり、HBs抗原量が250IU/ml以下にまで低下した例はそれぞれ2例(7%)、8例(26%)、24例(49%)と、DNA低下に伴ってHBs抗原量も有意に低下していた。DNA低下群と陰性化群を比較すると、陰性化群では治療開始時のALT値とDNA値が低い傾向があり、HBs抗原陰性化例が3例みられたが、HBs抗原量には有意差は認めなかった。また、DNA陰性化群ではHBs抗原量が100IU/ml以下にまで低下した症例は10/51例(18%)と、DNA低下群の3/31例(10%)に比べ多い傾向であった。HBs抗原陰性化がみられた3例は、全例男性、治療開始時の病態は慢性肝炎であり、ラミブジン+アデホビル併用治療で6年~10年の長期治療例であった。【結論】B型慢性肝疾患の核酸アナログ治療症例において、HBs抗原量はDNA低下にしたがって低下する傾向で、DNA陰性持続群のうち3例でHBs抗原陰性化をみた。HBV感染の完全治癒を治療目標とするにあたり、治療経過中のHBs抗原量をモニターしていくことは大きな意義があると考えられた。