外P-610

特発性血小板減少性紫斑病を合併した胃癌に対し胃全摘脾摘を施行した2例

米山 文彦1
共著者:家田 純郎1,木村 充志1,芥川 篤史1,水谷 文俊1,朝本 はるる1,細井 敬泰1,山崎 公稔1,水川 卓丈1,添田 郁美1,河野 弘1
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名古屋掖済会病院・外科
特発性血小板減少性紫斑病(以下ITP)は血小板減少を特徴とする自己免疫性疾患で近年Helicpbacter Pylori(以下H.pylori)との関連が指摘されている。治療上H.Pylori除菌の有用性が報告され推奨されているが脾摘が適応となる例もある。H.Pyloriは胃癌の発生とも関連しており当科で経験したITP合併胃癌2例を報告する。<症例1>45歳女性、平成19年1月に検診で血小板減少を指摘され当院血液内科でITPと診断された。呼気ピロリ試験でH.Pylori陽性であったためまず除菌を行ったがその後血小板数は低値で推移しステロイド内服が継続されていた。平成22年8月検診で胃病変を指摘され胃角から体上部にかけての比較的広範な早期胃癌と診断された。内視鏡施行時の迅速ウレアーゼ試験ではH.Pyloriは陰性化していた。ステロイド投与により血小板数は9万/mm3程度に維持されており術前γグロブリン投与なく胃全摘脾摘を行った。病理所見は低分化型腺癌 H0P0T1a(M)N0病期1Aであった。術後のITP治療はステロイドから離脱し血小板数は5-9万/mm3で推移している。<症例2>63歳男性。平成23年5月鼻出血で近医を受診し著明な貧血・血小板減少を指摘された。当院血液内科でITPと診断されγグロブリン、鉄剤、ステロイドを投与するとともに高度貧血の原因検索のため施行した内視鏡で胃体中下部に胃癌を認めた。迅速ウレアーゼ試験でH.Pyloriが陽性であり除菌を行ったが効果は限定的であったため術前大量γグロブリンと血小板投与を行って胃全摘脾摘を施行した。病理検査の結果、術前診断された病変は低分化型腺癌 H0P0T2(MP)N1病期2Aであり他に深達度Mの高分化腺癌の合併を認めた。術後は血小板数維持のためステロイドの投与の継続が必要となっており、術後補助化学療法としてTS1の内服が一度導入されたが血小板数減少のため中止となりその後は補助化学療法なしで経過観察している。