外P-606

幽門輪温存膵頭十二指腸切除術後15年目に発症した胃癌の1例

横山 真也1
共著者:上松 俊夫1,鈴木 秀昭1,金子 博和1,鳥本 敦史1
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名城病院・外科
症例は76歳、男性。1996年7月当科にて十二指腸乳頭部癌に対し幽門輪温存膵頭十二指腸切除術(以下PPPD)(Child変法再建)を受けた。病理診断は、現在の規約に沿うと、腫瘤型、20×15 mm、H0、pT3(pPanc 0、pDu 2)、pN0、int、INFb、ly1、v0、pn0であった。その後当科通院。15年後の2011年10月心窩部不快感、食欲低下出現。上部消化管内視鏡検査で胃体下部から体上部にかけて4型腫瘍を認めた(生検でgroupV、sig)。上部消化管造影検査では胃体中部から体下部の全周性狭窄を認めた。腹部造影CT検査では胃壁の肥厚、上腸間膜静脈の狭小化を認めたが、明らかな遠隔転移は認めなかった。11月手術施行。胃体中部から体下部にかけて著明な壁肥厚を認め、腫瘍は露出し、横行結腸間膜、横行結腸に浸潤していた。膵、膵腸吻合部、上腸間膜静脈に浸潤は認めなかった。胃全摘(幽門輪直下で切離)施行(R-Y再建、retrocolica)。横行結腸部分切除を併施した。病理診断は、LM、Circ、Type4、110×100 mm、por、pT4b(横行結腸)、INFb、ly2、v1、pN2(4 / 14)、pPM0、pDM0であった。最近は膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)に対する膵頭十二指腸切除術(以下PD)症例が増加したことや術後管理の向上により、PD後長期生存例が増加してきた。それに伴いPD後の胃癌症例も散見されている。膵液や胆汁の逆流が発癌因子の可能性が示唆されている。PD後早期には定期検査で発見される早期胃癌が多いが、ある程度経過すると進行癌が増える傾向にある。PPPD後15年目に発症した胃癌の1例を経験したので、若干の文献的考察を加え報告する。