外P-893
虫垂粘液嚢腫軸捻転の1例
須貝 英光1
共著者:芦沢 直樹1,鷹野 敦史1,古屋 一茂1,羽田 真朗1,宮坂 芳明1,中込 博1
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- 山梨県立中央病院・外科
症例は63歳、男性。関節リウマチにて近医通院中で、プレドニゾロンを1日5mg内服していた。初診前日から持続する右下腹痛を主訴に当科受診した。来院時発熱はなく、身体所見では、右下腹部に圧痛を認めたが前日よりも改善し、反跳痛は認められなかった。血液検査上白血球11,100/μl、CRP3.67と炎症反応の上昇、またCEA11.5 mg/dlと上昇していた。腹部CT検査では内部に液体貯留を伴う約10cmに腫大した虫垂を認め、虫垂粘液嚢腫が疑われた。症状が前日より軽快していたことから、保存的に加療し下部内視鏡検査、腹部MRI検査など精査後に手術を行う方針とした。入院し絶食補液と抗生剤投与したが、翌日腹満出現、腹部所見も悪化したため、同日緊急手術施行した。開腹所見では、虫垂遠位末端に径10cm大の嚢胞性病変を認め、虫垂が根部で時計方向に540°捻転していた。明らかな虚血性変化は認められなかった。術式は虫垂粘液嚢胞腺癌の可能性も考え、D1郭清伴う回盲部切除術とした。病理組織学的検査で虫垂粘液嚢胞腺腫と診断された。術後は順調に経過し、14病日で軽快退院した。現在術後1年4ヶ月で再発を認めていない。虫垂粘液嚢胞腺腫の発生頻度は全虫垂切除例において、本邦では0.08-4.1%と言われている比較的稀な疾患である。さらに虫垂粘液嚢胞腺腫の捻転となると、本邦での報告例は十数例で、稀な病態と言える。軸捻転の発症機転は、体位変換による振り子運動、虫垂の過長、粘液種、炎症、虫垂間膜の瘢痕、萎縮、過長などがあげられる。治療は、良性例は虫垂切除術でよいが、悪性所見を認める例ではリンパ節郭清を含めた回盲部切除術、または右半結腸切除術が必要となる。また、発症前に捻転と自然解除を繰り返すともいわれている。今回稀な虫垂粘液嚢腫軸捻転の1例を経験した。