内P-502

門脈腫瘍栓を伴う進行胃癌の1例

中沢 和之1
共著者:新垣 直樹1,前北 隆雄1,榎本 祥太郎1,森 良幸1,川西 幸貴1,三田 真理子1,太田 有紀1,西村 道彦1,一瀬 雅夫2
1
向陽病院・消化器内科
2
和歌山県立医大・2内科
門脈腫瘍栓を伴う胃癌は予後不良のことが多く、手術適応となることが少ない。今回我々は、腫瘍マーカーAFPの上昇を認め門脈腫瘍栓を伴う進行胃癌の1例を経験し、抗がん剤治療が奏功し、原発胃癌を切除した1例を経験したので、報告する。 症例は63歳、男性。主訴、食欲不振、心窩部痛。平成22年1月、心窩部痛を認め、血液検査では、Hb 7.9g/dlと貧血を認めた。腫瘍マーカー、CEA 11.5 ng/ml、AFP 276.2 ng/mlと上昇を認めた。上部消化管内視鏡検査を施行、噴門部から体下部小弯にBorrmann5型胃癌、胃角部前壁に胃静脈瘤を認めた。腹部CT検査では、門脈腫瘍栓を認めた。腹部血管造影検査を施行、門脈本幹閉塞しており、側副血行路の増生を認めた。PET-CT検査では、胃癌と門脈腫瘍栓にFDGの集積を認めた。以上の結果、胃癌、門脈本幹腫瘍浸潤と診断し、抗がん剤の治療を開始した。1st-lineとしてTS-1 120mg/日(第1-21日、休薬、22-35日)、CDDP 60mg/日(第8日)を1クール施行した。腫瘍マーカーは、CEA 10.7 ng/ml、AFP 449.9 ng/mlと上昇し、上部消化管内視鏡検査でも胃癌の悪化を認めた。2nd-lineとして、weekly PTX 100mg/m2(第1、8、15日)を開始した。5クール施行したところ、腫瘍マーカー、CEA 5.1 ng/ml、AFP 14.7 ng/mlと軽快、上部消化管内視鏡検査でも胃癌の著明な縮小を認めた。PET-CT検査では、門脈腫瘍栓のFDGの集積は認めなかった。7月27日、開腹胃全摘術を施行した。Adenocaricinoma(por1>tub2),pT2,int,INFb,ly0.v0,pN0,pPM0,pDM,AFP(-),HER2(-)の結果であった。術後、weekly PTXをさらに6クール施行。12月、PET-CT検査では、FDGの集積は認めず、平成24年1月、腫瘍マーカー、CEA 4.3 ng/ml、AFP 7.7 ng/mlと正常範囲内であった。今後も抗がん剤の継続予定である。