内P-544

はさみ鉗子併用前後における大腸ESDの治療成績

岡本 豊1
共著者:佐藤 諭1,2,太田 理恵1,2,佐竹 立1,2,山居 聖典1,2,珍田 大輔1,2,八森 久1,相馬 悌1,川部 汎康1,福田 眞作2
1
むつ総合病院・内科
2
弘前大大学院・消化器血液内科学
【背景・目的】内視鏡的大腸粘膜下層剥離術(以下大腸ESD)は,2012年4月から保険収載され,これから普及していく治療である.当院でも2010年8月に大腸ESDの先進医療の認定施設になる前からも,大腸ESDを施行している.そのなかで,単一処置具(flush knife)で処置を完遂していたが,はさみ鉗子(clutch cutter)を併用していくことで,処置が容易になる印象をうけた.今回の検討では,はさみ鉗子の併用前後での治療成績を比較・検討し,はさみ鉗子併用の利点を証明することを目的とした.【対象・方法】2008年1月から2011年6月まで施行された57例が単一処置具群(以下A群),2011年9月から2012年3月まで施行された19例が,はさみ鉗子併用群(以下B群)であった.B群では粘膜切開はflush knifeを使用し,粘膜下層剥離にはflush knifeとclutch cutterを併用していった.A群,B群において背景因子(年齢,性,病変部位,病変の大きさ等)には有意差を認めなかった.A群,B群において平均切除長径,一括切除率,スネアー併用率,平均治療時間,合併症について比較した.【結果】平均切除長径はA群で31.8±11.8mm,B群で32.7±12.3分(P=0.79),一括切除率はA群で91.2%,B群で94.7% (P=0.62),スネアー併用率はA群で10.5%,B群で5.2%(P=0.81),平均治療時間はA群で71.4±44.5分,B群で55.9±26.8分(P=0.09),合併症はA群,B群ともに0%であった.【結論】大腸ESDは大腸の屈曲,その壁の薄さ等から,未だ困難な処置である.しかし,はさみ鉗子の併用により,大腸ESDは,より容易にかつ安全に処置を完遂できる可能性が示唆された.