検P-26

腸間膜リンパ節腫大の経過観察

吉岡 二三1,2
共著者:田中 幸子1,高倉 玲奈1,井岡 達也1,蘆田 玲子1,石田 伸子1,福田 順子1,仲尾 美穂1,鈴木 玲子1
1
大阪府立成人病センター・検診部
2
河内総合病院・内科
<はじめに> 近年、超音波診断装置の画質向上により、腸間膜の小リンパ節まで検出し得るようになってきた。検診の超音波検査においても総肝動脈周囲リンパ節などのリンパ節の腫大が指摘されることが少なくない。これらは良性のリンパ節腫大であることが多いが、消化器癌のリンパ節転移や、悪性リンパ腫(ML)との鑑別が必要である。今回、検診超音波検査で指摘した腫大腸間膜リンパ節について長期観察例を経験したので、悪性リンパ腫との鑑別点を中心に報告する。
<症例> 症例は50歳代の女性、2003年、検診超音波検査にて腹部リンパ節腫大が指摘され精査目的で紹介された。腸間膜および上腸間膜動脈起始部の大動脈周囲に最大18×15×5.5mm大のリンパ節が多数描出された。いずれも境界やや不明瞭でエコーレベルも低くなかった。腹部超音波がん検診基準によるとカテゴリー3(良悪性の判定困難)に相当する所見であった。大腸内視鏡検査で異常なしであったが、悪性リンパ腫の可能が否定し得ず超音波検査による経過観察となった。境界が不明瞭でエコーレベルはやや低い程度であった。経過観察中、21×21×13mmとリンパ節腫大が増強しカテゴリー4(悪性疑い)に相当した時期もあったが、境界がきわめて不明瞭でカラードプラにて乏血性であったため引き続き経過観察が行われた。2012年までの9年間の経過観察中増悪傾向を認めず、悪性疾患は否定的である。
<結語>腹腔内リンパ節腫大の組織診断は開腹生検となることもあり、悪性リンパ腫の疑いの場合には経過の長い疾患であることを考慮し、ただちに精査ではなく超音波検査などの画像診断による経過観察を行うことが多い。腹部超音波がん検診基準においてカテゴリー4(悪性疑い)と判定された場合でも長径が15m未満で、境界不明瞭、血流が乏しいなどの特徴的所見があれば、ただちに精査ではなく経過観察可と考えられる。一方、境界明瞭、エコーレベルが低くカラードプラにてリンパ節内部に血流像を認める場合には、悪性リンパ腫や胃マルトT細胞リンパ腫などを考慮する必要がある。
図表は掲載しておりませんので、各学会誌をご確認ください。